一時的売上増を見せたアルコール飲料ビジネスのこれから

2020年 5月26日

世界の多くの国々で外出規制/自粛が徐々に緩和され始め、当初、消費者による買いだめで上昇したと伝えられた世界各国でのアルコール飲料の売上状況は、その後どのように変わるのだろうか。

完全な閉業を余儀なくされるバー・レストラン増加による影響

ニールセン社によれば、過去、米国では、バーやレストラン等でのアルコール飲料売上高全体の約20%を占めており、欧州に至っては、その割合は高く、例えばスペインでは60%に上る。また、中国、ブラジル、ナイジェリア、エチオピア等ではアルコール飲料売上全体の少なくとも半分をバーに依存している。 蒸留酒及びワインは特にその利益をバー、ナイトクラブ、免税店に依存しており、これらビジネスの閉業・長期的休業がアルコール飲料業界に与える影響は大きい。

他者との距離を取る必要性が続くことによる影響

ビールは特に人々が集まる場所で好んで多く消費される傾向が強いため、人の集まる機会が失われ続ければ、ビールの消費量は減少するとハイネケン社は指摘する。実際に3月には、ビール販売数量がイタリアでは1/3、スペインでは1/4、それぞれ減少したと報告された。

供給の滞り

世界の多くの国々で実施されたロックダウンは、中国、インド、マレーシア、メキシコ等の一部の国々で、アルコール飲料生産そのものを一時的に停止させた。
海外渡航制限・禁止は、空港常設の免税店の営業も停止させるため、特に蒸留酒売上に多大な影響を与えている。 世界最大のウイスキー市場であるインドでは、酒店の大半が営業停止を強いられ、また、南アフリカでは全てのアルコール飲料販売が1か月以上禁止されている。

経済危機により変化を強いられる消費者生活、消費者の所得低迷

ユーロモニター社によれば、ここ20年ほど続いたプレミア・ブランドの流行はなくなるか、少なくともしばらくは下火になると予測する。2008年から2009年の金融危機には、消費者は、より安い飲料製品に買い替える傾向が続いたが、それと似たような、あるいはもっと顕著な現象が見られるようになると見ている。

この3月、米国では、より経済的なブッシュ・ライト(アンハイザー・ブッシュ・インベヴ社)ビールの売上が急上昇した。欧州では、マルチパックを購入する消費者が増えたとカールスバーグ社は報告している。ベルギーのスーパーでは、最も売上を伸ばしたアルコール飲料は、箱ワインである。

また、欧米で人気が続いていた、独自のプレミアビールを特徴とする小規模経営クラフトビール醸造所は、今後、売上低迷に苦しむことが予想される。
飲料メーカーは、今後、消費者がより求めやすい価格帯のブランドの販促に注力するものと見られる。

Reuters, May 5, 2020 / The Economist, May 23, 2020

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