米国で飲料用アルミ缶不足が深刻に

2020年 7月 9日

米国の飲料用アルミ缶在庫状況が厳しくなっている。コロナ禍で、米国では、レストランやバーでの生ビール販売から小売店での缶による販売へとビール販売形態が劇的に変化したことが大きな要因である。

主に米国クラフトビール・メーカーに缶を供給するアメリカン・キャニング社(American Canning)(米国テキサス州オースティン)は、大手製缶会社から調達する空缶を小規模ビール醸造所へ供給する。現在の缶の品薄状態を受け、大手飲料メーカーの需要が優先されるようになり、小規模クラフトビール・メーカーへの割り当てが大幅に削減される状況にある。

アメリカン・キャニング社は、同社顧客に供給する缶を確保するために、メキシコ・グアダルハラにある製缶会社にも供給を依頼している。同社がメキシコに隣接するテキサス州にあること、並びに、米国・メキシコ・カナダの北米自由貿易協定(USMCA、元NAFTA)を利用できることが、この二国間のビジネスを実現に導いている。

クラフトビール醸造所のような小規模の顧客に缶が行き渡りにくくなっているもう一つの要因として、米国飲料缶製造会社メタル・コンテイナー(MCC)社の方針変更によるところも大きいと言う。MCC社は、世界最大のビール・メーカー、アンハイザー・ブッシュ・インベヴ(ABI)社、の子会社であり、同社が製造する缶の45%、及び、同缶蓋の55%をABI米国社向けに割り当てて供給しており、その後の余剰分をクラフトビール醸造所向けに販売する“MCCフレックス”と呼ばれるプログラムを提供していた。しかし、今、このような米国での飲料缶不足に直面し、ABI社は、MCC社が製造する全ての缶を必要とするようになった。その結果、このプログラムは少なくとも今年末までは中止となっている。

一方、世界最大の飲料缶製造会社ボール社(米国コロラド州)は、現在、特に12ozスリム缶が不足していると言う。その原因は、最近の米国でのハード・セルツァー人気によるところが大きい。ハード・セルツァーを代表するブランドであるホワイト・クローとトゥルーリー・ハード・セルツァー両ブランドが12ozスリム缶を使用している。

飲料用アルミ缶を使用する各飲料カテゴリーからの需要増は、コロナ禍以前に既に認められていたことも確かである。ハード・セルツァーに加え、元来、缶を使用していなかったその他の清涼飲料やウォーターのカテゴリーが、使い切りのプラスチック製容器から缶へ移行しつつあるからである。

米国に飲料缶製造工場を16工場持つボール社は、現在、既存工場のライン増設、及び、新工場建設で、この事態に対応している。

これから夏に向かい、飲料缶の不足は更に深刻さを増すと懸念されている。

just-drinks.com, July 7, 2020 / PennLive, July 7, 2020

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