ラテンアメリカ、ビール市場の最新動向

2025年 1月 8日

2021年からインフレが深刻な問題となっているラテンアメリカでは、インフレ率が低下している国もあるものの、経済成長は依然として鈍化しており、消費者の購買力は向上していない。

消費者は支出を意識的に見直し、支出が正当化されるユニークな体験に価値を見出す傾向が強くなっている。

 

そんな中、メキシコとブラジルではビール消費量がそれぞれ78.5リットルと69.1リットルと、地域平均57.4リットルを大きく上回っており、地域でのイノベーションの最前線に立っている。

ラテンアメリカにおけるビール消費の主要なトレンドは次の通りだ。

 

  1. ノンアルコール・低アルコールビールの台頭

この小さな市場は急速に成長しており、2023年から2028年にかけて年平均成長率(CAGR)は11.1%が予測されている。消費者が健康的なライフスタイルを重視し、アルコール摂取を減らしたり、排除したりする傾向が強まる中、国内外のブランドは高品質なフレーバーとユニークな特徴を提供することが求められている。ブラジルでは、ビタミンDやBを添加した製品が登場しており、他の地域にはない特徴を持つ。

 

  1. クラフトビールの苦戦

プレミアムビールは、他のビールセグメントよりも高い成長を見せており、消費者はより洗練されたビールを求める傾向が強くなっている。このため、大手の醸造所はクラフトブランドを買収し、その伝統と品質を守りつつ、大手ディストリビューターの強力なバックアップの元、流通能力を拡大している。また、大手は、プレミア感を持たせるために100%モルトやクラフト風のバリエーションを取り入れつつ、それを手頃な価格で提供しているため、独立したクラフトブランドは、苦戦を強いられている

 

  1. 持続可能性への取り組み

ビールの生産における持続可能性はますます重要になっており、水の再利用やエネルギー効率、パッケージのリサイクルが焦点となっている。多くの大手ビールメーカーはカーボン排出削減目標を設定しており、その中にはラテンアメリカに所在する工場もある。そのため、パナマではCervecería Nacional(AB InBev)が太陽光発電を導入したり、エクアドルの工場では水使用の効率化を進めたりしている。

 

消費者は持続可能性の取り組みについて透明性と測定可能な結果を求めているため、各社の行動は具体的かつ検証可能なものである必要があり、そうすることで、飲用者はそれに共感し、自分たちが購入する製品は地球への悪影響が少ないと満足することができる。

特にZ世代とベビーブーマー世代は持続可能性の主張に対して厳格で、真摯な取り組みを求めている。

また、ラテンアメリカの消費者は他の地域と比較して、持続可能な製品が店頭で手に入れにくいと感じており、こうした価値観を明確に伝えることが売上を促進するために重要だ。

 

消費者の好みが進化する中で、これらのトレンドを理解することは、ラテンアメリカ市場で成功するために不可欠だ。健康志向を優先し、手頃な価格でプレミアム感を持たせ、持続可能性を活用することで、企業は消費者の価値観に合致し、インフレや他のカテゴリーからの競争という課題を乗り越えることができる。

Euromonitor International, December 20, 2024

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